コンピュータを用いた理科教育教材の開発
インターネットとJava言語
およそ2年前に『インターネット』が世間に現われはじめ、多くの情報を国境を越えて自由に共有することができるようになった。インターネットとは、様々なコンピューターのネットワークどうしを世界規模に連結させた大コンピューターネットワークのことである。当時、インターネットは、文字、絵、ビデオなどの作られた情報を受け取る形式のもの、いわば、データベースとしての利用が主流であった。
ところが、1年前に『Java』というコンピューター言語が開発され、インターネットの利用可能性をさらに高めるものとなった。現在、インターネットの世界ではJavaの研究が盛んになってきている。なぜ、Javaがこんなに注目されているかといえば、インターネットのホームページの中の動的で複雑なインテリアとしての利用、いわゆる、「凝ったホームページ」を作ることができるということで当初は注目された。

しかし、現在では、従来のようなデータベースとしての活用だけでなく、理科、医療、経済などの分野で、インターネットを通じてのいろいろな形での利用の可能性が認識されはじめているからである。Javaは、それまでデータを埋め込むだけだったホームページの中に、ソフトウェアを組み込むことができるようになった。さらにこのJavaソフトウェアは、『Macintosh』や『Windows』などのOSに依存せず、同じプログラムを実行できるという点で、利用対象は大変広くなった。さらに、従来と同じように通信費などはかかるが、Javaでできたソフトを無料で利用できるという点で、教育機関や一般家庭などの多くの人たちには利用しやすくなっている。
また、現在のように「理科離れ」が進んでいる中で、コンピューターを用いた教育は、授業の補助的教材として効果が見込まれてきている。コンピューター教材は、教育の様々な理由から実際に実験することができない現象を研究したり、体験するには、コンピューターシュミレーションが大きな力を発揮する。小さすぎたり、大きすぎたり、速すぎたり、遅すぎたり、直接見ることができない現象でも、画面上で原子や惑星をビー玉くらいの大きさに表わして、時間を制御したり、様々な環境を設定したりして、いろいろな物理現象を調べることができる。
ベータベースとしての従来のインターネット教材と、模擬実験としてのJavaを用いたインターネット教材は、分かりにくいところを分かりやすく、何回でも繰り返し試すことができ、地域による格差もなく自由に利用でき、コンピューターゲームの世代の子どもたちの利用も促進され、興味をもって自然科学を学ぶことができるようになってきている。実際に、世界中で多くの利用例が紹介されており、今後、インターネットとともにJavaの一層の利用が進むと予想される。
文字や絵を中心とした従来のインターネット教材の活用範囲は非常広く、理科全般についての活用例は大変多い。また、Javaの活用例としては、理科分野では特に教育教材としての利用が多く、ケプラー運動のアニメーション、物体の放物運動のシュミレーション、分子構造を立体的に観察するものなどがある。Javaはまだ発展途上にあり、できる範囲、使える技術が限られている。しかし、今後、Javaで作られたソフトを開発するための開発ツールやJDK(Java Developer's Kit)の向上することと、研究がますます盛んになることによって、その利用範囲が広がり、ソフトの内容が充実していくことが期待できる。
当理科教育科においても、理科教育や科学史の研究の他に、昨年春からJavaの研究を進めており、いくつかの理科教育教材をHTMLやJavaを用いて、理科教育に役立てそうな教材をいくつか作った。この言語を完全にマスターしているわけではないので、ところどころに動作に不安定な部分があるが、コンピューター自身に大きな害を与えるものではない。これらはだれでもインターネット上で利用でき、無料で使用できるソフトであり、それらのプログラムも同時に公開するので、このプログラムを改良して、より良い理科教育教材が生まれることを期待したい。
JAVAで作った理科教育教材の例
ここでは、JAVA言語を用いて作った理科教育教材を紹介をする。
・ボール投げのプログラム
このシュミレーションは、太陽や太陽系の諸惑星で物体を投げ上げた場合、物体はどのような運動をし、どのくらいの飛距離がでるのかが分かるようになっている。実際には行くことのできない太陽や諸惑星、初速度や打ち上げ角度を選択して、どのくらい遠くまで飛ぶのか、興味をもって試すことができる。
・落下のプログラム
このシュミレーションは、上のシュミレーションの応用であるが、落下する物体が時間の変化によって、飛距離も刻一刻と変わる表示ができるようになっている。
・諸惑星の公転のプログラム
このアニメーションは、太陽系の諸惑星がどのような周期で太陽のまわりを公転しているかが、視覚的に分かるようになっている。紙の中の表で周期を知るのも大切であるが、他と比較しながら惑星の公転の様子を見ると一層理解できると思う。地球の公転を基準に他の惑星の公転の速度を比較するのもおもしろい。
・楕円軌道導出のプログラム
このアニメーションは、ファインマンが幾何学的に楕円軌道を求めた方法の中で、楕円の片方の焦点を中心に円を描いたときに、同時にその内側に楕円が現われる様子を動的に見るものである。なかなか紙の中の図や説明だけでは分かりにくいが、アニメーションで再現することによって、次第に楕円が形作られていくのが分かる。
・楕円軌道導出のプログラム
これは、上のファインマンによる楕円軌道導出のアニメーションに、画面の消去という機能を付け加えたものである。
・面積速度一定則のプログラム
このシュミレーションは、このページにアクセスした人が選択によって様々な状況を設定して、軌道の形や太陽からの距離によって、惑星・彗星の運動の様子がどのように変化するのかを確かめることができる。紙に書かれた面積速度一定の図を見ることによってその様子を理解できるのだが、惑星は実際に動いているのだから、面積速度一定の運動を動的に見ることによって一層の理解が深まると思う。
・諸惑星の公転のプログラム
このアニメーションは、太陽系の諸惑星がどのような周期で太陽のまわりを公転しているかが、視覚的に分かるようになっている。紙の中の表で周期を知るのも大切であるが、他と比較しながら惑星の公転の様子を見ると一層理解できると思う。地球の公転を基準に他の惑星の公転の速度を比較するのもおもしろい。
・テイラー展開視覚化のプログラム
sinやexなどのテイラー展開を単に計算によって求めただけでは、何をしているのか、その計算に何の意味があるのかが分かりにくい場合がある。このシュミレーションは、いくつかの式について、展開した式の項数を増やすことによって、本当の式と近似式との違いがどのように変わっていくかが視覚的に見ることができる。自分の計算した式とシュミレーションの両方を見ることによって、計算の意味の一層の理解が深まると思う。物理において近似計算が必要な場合があるので、大学における理科教育の一つとしてこのようなプログラムを組んでみた。