プリンキピア成立までの道のり(5)


 ここでは、プリンキピア成立までの道のり、とりわけ、ニュートン自身が書いた論文から考えていきたい。

Newton 『回転している物体の運動について(1684-1685年頃)[9]』

定義1

 中心とみなされるある点に向かって、物体がそれによって押しやられる、あるいは引かれるところのものを、求心力(vis centripeta)とよぶ。

 以前はニュートンは遠心力に基づいて考えていたが、フックの考えから『求心力』という言葉を作り、用いることにした。


定義2

 そして直線に従うその運動を、それによって継続しようとするところのものを、物体の力あるいは物体に固有な力とよぶ。

仮定2

 すべての物体は、固有な力(vis insita)だけによって、もし外的な何ものかが妨げないならば、直線に従って一様に無限に前進すること。

 定義2と仮定2より、固有な力とは慣性のことであり、慣性の法則について述べている。固有な力と外から加えられた力とを区別している。

仮定3

 物体は、与えられた時間内に、結合した力によって、等しい時間内に分割された力によって継起的に運ばれたところに、運ばれる。

 ここでは、「結合した力によって」とあるように、力の合成に関することが述べられている。「結合した力」とは右図の平行四辺形のベクトルDAにあたり、「分割された力」とはベクトルDBとDCにあたる。また、これは、求心力による運動と固有な力による運動(慣性運動)との合成運動についても当てはまる。



Newton 『流体中の球形物体の運動について(1684-1685年頃)[10]』

法則2

 静止していることの、あるいは運動していることの、状態の変化は加えられた力に比例し、力がこめられた直線に従って生ずる。

 ここでは、物体が静止していようが動いていようが、その物体の状態の変化は加えられた力に比例し、力の作用する方向とその物体の状態の変化の方向が同一であることも述べている。


法則3

 与えられた空間に含まれている2物体相互の運動は、問題となっている空間が静止しているか、円運動することなしに絶えず一様に直線的に動いているか、であっても同じである。

 ここでは、その空間が静止していようが一様直線運動をしていようが、同じ空間内に2つの物体がある場合は、それぞれの物体の運動の相互関係は同じであることを言っている。つまり、地上で2つの球を衝突させるのも、等速で進む船の上で2つの球を衝突させるのも、それぞれ2つの球の相互の関係は同じであることを言っている。この法則3は、プリンキピアの運動の三法則に続いて述べてある『系5』にあたる。


補助定理1

 同時に〔2つの〕力によって作用された物体は、もし力が別々に作用したならば、その辺を描くのと同じ時間内に、平行四辺形の対角線を描くだろう。

 ここでは、上に挙げた『回転している物体の運動について』の仮定3について、力の平行四辺形として明確に取り上げている。



Newton 『一様に屈曲させられる媒体中の物体の運動について(1684-1685年頃)[11]』

定義1

 絶対時間は、その本性によって他のものに無関係に、等しく流れる。

 これは、プリンキピアの『定義』にあるの『注』の中の「I.絶対的な、真の、数学的な時間」の説明にあたる。


定義3

 絶対空間は、それ自身の本性によって、たえず静止にとどまる。時間の諸部分の順序が不変なように、空間の諸部分の順序もそうである。

 これは、プリンキピアの『定義』にあるの『注解』の中の「II.絶対的な空間」の説明にあたる。


定義9

 物体の運動は、ひとつの場所から他の場所への移動であり、それゆえ場所の種類によって、あるいは絶対的であり、あるいは相対的である。

 これは、プリンキピアの『定義』にあるの『注』の中の「IV.絶対運動、相対運動」の説明にあたる。


定義10

 速度は、ある時間に通過した通路の長さに関しての、移動の量である。

 ここでは、速度の定義をしているが、プリンキピアでは速度についての定義は姿を消し、定義することなしに使われている。


定義11

 運動の量は、速度と移動させられる物体の量とが結合して生ずるところのものである。

 これは、プリンキピアの定義2にあたる。


定義12

 物体に内在するそして本質的な固有な力は、それによって静止ないし直線上を一様に運動することの、状態を継続するところの能力(potentia)である。

 これは、プリンキピアの定義3にあたる。固有な力の定義の説明に続いて、これは慣性のことであると補足説明がある。


定義14

 物体に加えられた力とは、それによって、静止していることのあるいは運動していることのその状態を、変化させるようにと物体が駆りたてられるところのものである。それは、衝撃、打撃的圧、連続的圧、求心力、媒体の抵抗等といった種類のものである。

 これは、プリンキピアの定義4にあたる。


法則1

 すべての物体は、それらが加えられた力によってその状態が変えられるのでなければ、その固有な力によって、その静止あるいは直線上の一様な運動の状態を継続する。

法則2

 運動の変化は、加えられた力に比例し、力が加えられた直線方向に沿って生じる。

法則3

 すべての物体は、他のものに作用する限りにおいて、等しい大きさの反作用を受ける。他のものを押すあるいは引くものは何であれ、他のものから同様に押されあるいは引かれる。......その状態を保存するために発動された力が、その状態を変化させるために他の物体に対して加えられた力と同じものであり、はじめの物体の状態の変化が発動力に比例し、他の物体の状態の変化が加えられた力に比例する限りにおいて、この法則は定義12と14によってたしかに成り立つ。

 これら法則1、2、3は、プリンキピアの3つの法則に当てはまる。


法則4

 与えられた空間に閉じこめられた物体の、お互いの間の運動は、空間が絶対的に静止していようと、円運動なしに直線上を一様に永遠に運動していようと同じである。たとえば、船の中の事物の運動は、船が静止していようと直線上を一様に動いていようと同じである。

 この法則4は、先に紹介した『流体中の球形物体の運動について』の法則3にも述べられている。しかし、これはプリンキピアでは法則としては説明されず、プリンキピアの『系』の中で説明されている。