プリンキピア成立までの道のり(3)


 ここでは、プリンキピア成立までの道のり、とりわけ、ニュートン自身が書いた論文などから考えていきたい。

Newton 『De Gravitatione(1668-1669年作成)[7]』

定義5

 力(vis)は運動と静止の原因的原理である。 そしてそれは、ある物体の中にこめられた運動を、生成させたりあるいは破壊したりする、あるいは少なくともそれを変化させたりする外的原理であるか、物体に植えつけられた運動あるいは静止が、それによって保存されるか、その状態を保持しようと努力する、そして抵抗に反対する内的原理かである。

 ここでは、物体に作用する力、物体の持っている力の2つを挙げ、力の概念について述べている。物体の持っている力とは恐らく慣性のことであると思われる。後にプリンキピアでは、この『物体の持っている力』を『物質の固有力』と呼び、『慣性』のことであると補足し、一般に言う『力』とは区別している。


定義8

 慣性(inertia)は、物体の状態が外的な力によってたやすく変化させられないための、物体に内在する力である。

 この定義8は、プリンキピアの定義3の『物質の固有力、慣性』に当たる部分である。


Newton  1679年から1680年にかけて書かれたと思われる原稿[8]

仮定1

 諸物体は、それらが媒体の抵抗によって遅らされたり、何か他の力によって乱されたりしないかぎり、直線上を一様に動く。

仮定2

 運動の変化は、運動が変化させられる力にいつも比例する。

 仮定1では運動の第1法則、仮定2では運動の第2法則にあたる部分で、プリンキピアに次第に近づいていることが分かる。

仮定3

 2つの異なった線の方向につぎ込まれた運動は、もしそれらの運動の大きさに比例してそれらの線をとり、平行四辺形が完成されるならば、これらの複合しようとしている運動のおのおのが、平行四辺形の側線を描く時間内に、平行四辺形の対角線を描く運動を合成する。運動ABとACは運動ADを合成する。

 この仮定3は、プリンキピアの運動の三法則の後に続く系1にあたる部分である。この平行四辺形の法則のことについては、すでに1666年頃に知っていたようである。


命題1

 もし物体が真空中を運動し、そして不動の中心に向かって連続的に引かれているならば、その物体は同一平面内をたえず運動し、等しい時間にその平面内に等しい面積を描く。

 命題1では上の仮定を用いて、力の中心のまわりを回る運動においては、面積速度一定の法則が成り立つことを証明しており、プリンキピアの形式に近い文章となっている。


命題2

 もし物体が楕円のどちらかの焦点に向かって引かれ、そして引力の量は物体が楕円の周囲を回転するのに充分なものである場合、楕円の2つの端における引力はそれらの端のその焦点から物体〔までの距離〕の自乗に逆比例する。

命題3

 物体が楕円のどちらかの焦点に向かって引かれ、そしてその引力によって楕円の周囲を回転させられる場合、引力は楕円の焦点から物体への距離の自乗に逆比例する。

 この命題1、2、3は、惑星の運動を求める上で重要な部分である。それまで距離の自乗に比例して運動する物体の軌道は何かが重要な問題であった。フックからケプラー運動に取り組むきっかけを与えられ、慣性運動と引力による運動との合成運動という考え方を吸収し、さらに、運動学と数学における準備ができていたので、1680年にはニュートンによって問題が解かれていた。