プリンキピア成立までの道のり(4)


 ここでは、プリンキピア成立直前のニュートンの考え、フックやハリーなどの人物も交えながら、考えていきたい。

 ロバート・フック(1635-1703)は、1674年に、『地球の年周運動を観測から証明するひとつの試み[6]』という論文を発表し、興味ある3つの仮説を提出した。それによると、
 第1の仮定:「すべての天体はどれでも、それら自身の中心へ向かう引力あるいは重力を持っており、それによって自身の諸部分を引きつけ、我々が地球において見るように、それらから飛び去ってしまわないように保っている。それだけでなく、すべての天体はそれらの活動範囲内のすべての他の天体をも引きつけている。そしてその結果、太陽と月が地球の物体と運動に影響を与え、そして逆に地球が月や太陽に影響を与える。それだけでなく、地球の引力が水星、金星、火星、木星および土星の運動のひとつひとつにかなりの影響をもっているのと同じく、水星、金星、火星、木星および土星もそれらの引力によって、地球の運動にかなりの影響をもっている。
 第2の仮定:「直線的で単純な運動におかれているすべての物体は、それらが他の何か有効な力によって曲げられ、円、楕円あるいは他のより複雑な曲線を描く運動へと変えられないかぎり、直線内をずっと動きつづけるであろう。
 第3の仮定:「働きかけられている物体が、引力の中心に近ければ近いほど、これらの引力はより強く作用するというものである。私は、これらそれぞれの大きさがどの程度かということはまだ実験的に立証していないが、しかるべき方法で充分活用されるならば、天文学者がすべての天体の運動をある一定の規則に還元するのに大きな助けとなるような考えである。この考えなくして、それを行うことはできないと思う。円的振り子〔円錐振り子〕と円運動の本性を理解する人は、この原理の全体をたやすく理解するだろう。

 上のことから、第1の仮定では、すべての天体はそれ自身の中心へ向かう引力を持ち、諸物体を自身に引きつけ、さらにすべての天体は互いに引き合い、影響を及ぼし合っているということ(万有引力の法則)、
第2の仮定では、物体は、外力が働かない限り、直線運動を続けること(慣性の法則)、
第3の仮定では、引力の中心に近いほど、引力は強く作用すること、
を述べている。
 フックはこの時点で、定性的なことを提言しているが、まだ、定量的なことまでは述べていない。しかし、フックからニュートンへの手紙の中で、惑星の運動について慣性運動と引力による求心運動との合成運動であると述べていることは、大きな前進と言える。さらに1680年1月に、引力はつねに中心からの距離の自乗に逆比例することを述べ、また、ケプラーの第2法則(面積速度一定則)についても考えていたようだ。

 ニュートンは、1668年頃には、惑星が太陽から遠ざかろうとする諸力は、太陽から惑星までの距離の逆自乗に比例することを明らかにしていたようである。
 そして、フックは、距離の自乗に逆比例する中心的引力によって描かれる曲線は何であり、その根拠は何であるかを求め、1680年にニュートンに手紙を送っている。中心からの距離の自乗に比例して力が減少することについては、ニュートンのほうが先かもしれないが、求心力という考え方では、ニュートンはフックからいくつかのヒントを得ていたようである。

 また、ここで有名な話がある。1684年1月、エドモンド・ハリーは、フックとクリストファー・レンに会い、距離の自乗に逆比例する関係で減少していく力について話し合った。その場でフックは、逆自乗則からすべての天体の運動の法則が証明されると確信しており、このことを自ら証明をしたと言ったが、実際にはその証明を提示できなかった。同年8月、ハリーはケンブリッジに行き、ニュートンに同じようなことを質問した。ニュートンはすぐに『楕円』と答え、それは計算によって求めたと言った。その場で計算を見い出せなかったので、ハリーに計算の方法を送ると約束して、その後に彼にその証明の論文を送った。ハリーはこの重要性に気付き、ニュートンにまとまった書物を書くように説得した。その書物が後に『自然哲学の数学的諸原理(プリンキピア)』として出版されることになる。