デカルトの科学思想

 近代科学の成立には、コペルニクス、ケプラー、ガリレイ、ニュートンが頻繁に紹介されている。ニュートン力学の成立にはさらに多くの人々の努力が必要であったことは言うまでもない。
 ルネ・デカルト(1596-1650)は、ホイヘンスやニュートンたちに多大な影響を与えた。ニュートンの運動の3法則は、デカルトの思想を叩き台にして築かれたと言っても過言ではない。なぜなら、デカルトの思想には、渦動説といった現在では受け入れられない説もある一方で、すでに慣性、運動量の保存、運動の直進性などが含まれているからであり、さらに個々の自然現象をできるだけ少ない法則で表わし、そこから様々な現象を説明しようと試みているからである。それまでの神学的自然観に全面的に対抗しうる包括的機械的自然学の体系を提示したところが、デカルトの特徴であり、評価すべきところである。しかし、彼は自然を数学で記述することには前向きであったが、実際には哲学的な記述にとどまり、数学者・科学者としてよりは、むしろ哲学者として有名である。

 デカルトは、機械的に世界を論じ、現象を分析し、具体的な説明として宇宙のしくみについて渦動説を提起している。
 彼の著書『哲学原理』(1644年)では、デカルトの想像した宇宙での運動は、渦動説を用いて説明されている。この渦動説によると、宇宙空間に満ちている微小な物質粒子は互いに接しながら渦動運動をしている。太陽の周りを惑星が回転しているのも、地球上の物体が地上に落下するのも、この渦動による影響であると主張している。例えば、惑星は宇宙空間を満たしているエーテルの渦巻きによって、水上に浮かぶ木片のように太陽を動かされている。よって、惑星は、太陽のまわりをすべて同じ方向に、ほぼ同一平面内で回り続ける。この渦動説は実際には間違っていたが、自然一般について、統一的な機械的説明を与えていた点で画期的であったといえる。彼は数学的手段を重要視した。すべての運動は物理的接触によって起こるという近接作用の概念を取り入れた。
 このようなデカルトの自然哲学は、ヨーロッパ大陸ではしばらくの間強く支持された。直接に接触していない物体間に力が働くというニュートンの遠隔作用の考えは、物体の隠れた性質を認める中世的な思想への復帰であるとして、ヨーロッパ大陸では直ちに一般に受け容れられなかった。むしろ、デカルトの近接作用の考え方が好まれた。このようなことからも、デカルトの影響の大きさを知ることができる。
 それでは、原典にあたってデカルトの思想を考察してみる。